EGAKU受講者
インタビュー

辰野 めぐみ さん
外資系化粧品会社  マーケティング マネージャー

「描く」という行為を、人生に取り入れたい。

interview

大人になってからは絵を描く機会がなかなかないけれど、「絵を描く」という行為はもともと好きで、人生の中にずっと取り入れたいと思っていました。そんな訳で、新年の「描き初め」には毎年単発で参加していたんです。
単発で参加するたびに、自分の中で何かしらの発見があるから面白いと思っていました。またEGAKUプログラムはとてもコンパクトにまとまっていて効率的なプログラムだとも感じたので、毎月描くということを自分の生活に組み込んでいったら、人生において絵を描くという行為が習慣化できるかもしれないと考えていました。
ちょうど仕事においても役職が変わってから少し経った頃で、自分のやっていることを冷静に見て自分と向き合いたいと思うタイミングでもありました。

初めて向き合う「哀」は自分にとって重要な感情だった

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「哀 –Sorrow-」というテーマに深く向き合ったのは、人生でこの時が初めてでした。哀しみがないとポジティブになれないという世界観を描くことができた時、哀しみとは自分にとって重要な感情だったのだと気がつきました。同時に、こういうものが自分から出てくるんだという驚きもありました。
また「怒 –Anger-」がテーマの時は、それまでネガティブな感情として好きではかなったし、避けてきていたので、向き合うのが難しかったですね。ただ、描いた作品への周囲からのコメントは、思いもよらない楽しそうなものが多くて面白かったですね。私は普段から怒りを爆発させるということがあまりないので、そういう部分を感じさせたのかなと思いましたね。

どのテーマにも「矛盾」があり、自分の「バランス」が絵に表れます。

自分の中では「バランス」がいつも大事だと思っていて、それがどうしても絵にも出てきちゃうんです。
人生って常に矛盾の塊で、そこでどういう思考をして、どう楽しんで、どうバランスをとっていくかなんだと思います。
絵を描いている時も、常に何のテーマで描こうが必ずその矛盾と向き合うチャンスがあるわけなんですが、自分がそれをどう処理していくか、というバランス感覚みたいなものがあると思うんです。そのバランス感覚みたいなものが最後絵に表れていて、それが自分でも面白いんです。
トツキトオカでは1つのテーマに対して短時間で向き合うし、15センチ角の中に描かなければいけないから、決まった時間で集中力が高まって、その中で矛盾と遊べるというのはあると思います。

絵と自分とテーマのシンクロが自然になっていきました。

描き続けてひとつ言えるのは、絵と自分とテーマのシンクロが自然になってきたということです。最初はテーマによって、肩に力が入ったり、今の自分の状態はこうだから向き合えないとか、どこかでブロックかけちゃったりしていたんですよね。絵も思うように描けていなかったと思います。
でもこの体験を重ねれば重ねるほど、肩の力が抜けて、自分とテーマと描くことがだんだん一つになる感覚がありました。
参加者も素晴らしい人たちだし、いい緊張感もあり、はじめは息を止めて描いていたのが、深呼吸して描くようになりました。
どんなテーマが来ても自分のテーマや興味あるものとシンクロさせることができるようになってきて、何を描いてもいいじゃない、自由に考えようという感じになってきました。それに何回描いても違うものが出てくるじゃないですか。これは可能性無限大ですよね。

他の受講者にすごく勇気をもらっています。

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他の受講者の方からのフィードバックにすごく勇気をもらいました。自分として意外性のある作品に仕上がっていても、すごく私らしいとかこういうの好きとか言ってもらえると、ああ、何を描いてもいいんだ、と思えました。はじめは頭で考えて描かなきゃと思って描いていたんですが、そうすると意外にドライなコメントしかもらえなくて、もういいやと思って描いたものにすごくたくさんコメントもらえたりしたんですよね。頭で考えて出したものが必ずしもいいものじゃない、人に伝わらないというのを体験すると、「もうこれは自分を開くしかない、そっちの方が面白い。」というふうになってくるんですね。私はさらけ出せない方なので、勇気をもらってちょっとずつ、自分を出してみようと思えるようになりました。

限られた時間の中で取捨選択をできるようになりました。

トツキトオカを始めたくらいの時期って、自分の中でやりたいことがいっぱいあって、限られた時間の中で優先順位をつけることに苦しんでいた時期でもありました。気力はあってもバランスがうまく取れずに睡眠時間も削ってやっていて、苦しくなったり疲れたりしてしまっていました。それがトツキトオカをやる中で、優先順位をつけることができるようになりました。
EGAKUプログラムでは最終的にこの15センチ角の中に描かなければいけなくて、そうするといろいろなものを捨てなければならない、初めに思ったことをかなり捨てなきゃいけないんですよ。いろんなことを思っても描ききれないんです。
トツキトオカを続けるうちに、そういうことが良い感覚として自分の中に少しずつ組み込まれていって、捨てることで活きるものがある、というのを体感的にわかるようになっていきました。
普段の自分の時間の中でもそういう取捨選択をかなりできるようになった気がします。
捨てるものに対して未練がなくなるというのが、このトツキトオカを通して感じた意外なことですね。

思考パターンが増えて俯瞰的になりました。

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はじめのワークシートで色を決めてそして言葉でも考えるので、思考の入る角度がすごく違ってくるのも面白い経験です。
日常の中でも、物事がうまくいかないどうしようと思った時に、あ、じゃあまず色で考えようって、あのワークシートが思い浮かびます。物事を考える思考パターンが一つ増えた、カードが1枚増えた感じです。
うまくいかないなら、いつもと違うこのプロセスで行こうとか。行き詰まった時も、いやこの考え方だけじゃないだろうと、俯瞰的になりましたね。考え方、捉え方の多様性みたいなのが毎回繰り返し意識することで染みこんでいく感じでした。
そして日常の生き方においてもそういうことが考えずにすっと出てくるようになりました。

毎回多様性を再認識できて、心がおおらかになりました。

多様性については、もう一つ気づきがあります。
同じテーマで同じ時間で取り組むのに、こんなに違う絵が出てくるんだという驚きですよね。
仕事でも、同じことについて共通認識していると思っていても、実は誤解だらけな可能性もあるわけです。もともと世の中は美しき誤解で成り立っていると私は思っているんですけど、これだけ同じものを使って描いてもこんなに違うのだから、と再認識できて、どんな状況でも心がおおらかになりますよね。本当にそれは毎回自分の想像を超えていて、多様性に衝撃を受けています。
会社で同じ場で過ごしていると若干共通価値になっていくものもあるかもしれないけれど、そういうところを期待しないでいろんなことに取り組めるようになりました。心が大きくなりましたね。

本当に一人ひとりがアーティスト

限定的な環境の中で、毎回こんなにもクリエィティビティのあるものが生まれるのがすごいですね。
私はマーケティングの仕事をしているんですが、「自由に」というとクリエィティビティは出てこないんですよ。限定状況の中でクリエィティビティって爆発する。このプログラムは、そのすごくいい例ですよね。
私は仕事以外の活動として、発酵は微生物が織りなすアートだというアートプロジェクトの中で、日常アーティスト『はっこうちゃん』としても活動しているんですが、以前は美大も出ていないし、ちゃんとアートの勉強をしたわけでもないから、自分のクリエィティビティを世の中に出しちゃいけないみたいな、変なブレーキがあったんです。
でも、トツキトオカをやっていたら、本当に一人ひとりがアーティストだと思えたし、自分を含めて絵が描けるんだという自信をもらいました。ダメ元でも、自分のできることを表現していいんだという勇気をもらいましたね。

等身大の自分でいる勇気を持つトレーニングになりました。

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もともと「等身大の自分でいたい。そのための勇気を持ちたい。」という気持ちはあったのですが、今ではだいぶそうなってきています。
30代になったばかりの頃、自分の理想と現実のギャップが大きすぎて、等身大の自分を受け入れられない事がすごく苦しかったんです。肩に力が入って、自分をやけによく見せようとしたりしていました。いつか自分が等身大でポジティブにいられる状態になりたいという葛藤の連続だったんですよ。
でも30代後半になって、自分の中でも正直に自分と向き合うということに慣れてきたタイミングでトツキトオカができたということは、本当にありがたかったことです。
自分に正直になることを自然に少しずつ受け入れられるようになったし、このトツキトオカが等身大の自分でいるための、何よりその勇気を持つトレーニングになったように思います。