EGAKU受講者
インタビュー

桐島 訓子 さん
ヨガインストラクター

親子で参加した初めてのEGAKU

はじめにEGAKUに興味を持って、Facebookに投稿されている子どもたちの作品を見た時、「みんな天才!」と思ったんです。あのパステルの感じがすごく綺麗で、これは心身どちらにとってもすごくよいだろう、参加してみたいなと思って、渋谷のヒカリエで開催された「おとなと子どものEGAKU」に親子で参加させていただきました。

プログラム全体については、描くことはもちろん、作品を見て感じたことなどをシェアするコミュニケーションのやりとりもものすごく良かったです。他に参加されていた親子のそれぞれのキャラクターと作品のつながりもとても面白かったですね。

また、「表現に上手下手はないんだよ」といった導入の仕方もすごく良かったし、アーティストが鑑賞や創作をする際に、方法を示すという意味での手助けを実際にしてくれたことも大きいと思いました。
Kuniさんが「こんな風に描きたい場合にはこうしたテクニックがあります。でも使わなくてもいいんです」ってやってくれた感じ。普通アーティストというと遠い存在で、個人の創作について教えてくれるということはないと思います。アーティストが身近にいるというのはとても面白いアプローチだと思いましたし、こうした身近なアーティストがもっといたら、日本人の美意識はもっと高まるのではないかなって思いました。

こどもは大人が思っているよりももっと真剣

大人の作品かと思ったら子どもの作品だったということが多く、それが意外な発見でした。そして、お互いの鑑賞ワークを通して、子どもは実はとても深く考えている一方で、意外と大人の方がなにも考えずに描いているなという印象を持ったことも発見でしたね。

大人になると、職業だったり生活のスタイルだったり、決まっていることが多いので、割とつきぬけているというかお気楽になれる部分がある。でも、こどもはたくさんの可能性があるからこそ将来や自分に対する恐れや不安や期待もある。さらに自分の価値もまだわからない状態だから人にどうみられるか、どう思われるかということについて実は真剣に考えているんですよね。子どもは大人たちが思っているよりもっと真剣というか。
だからこそ大人がサポートしてあげたり励ましたり、また「人」としてきちんと接していくことが必要なんだと思いました。そういった意味で、このワークショップは子どもと価値観を共有するとてもよい機会でした。

これは今回このワークショップを通して初めてというか改めて認識したことなんです。これまでも、なんとなくわかっていたりとか、どこかの偉い人がいいこと言っていってるなというのはあったとしても、やはり自分で体験して腑に落ちないと自分の想いにはなっていなかったというか。そういう意味で今回は実際に親子で体験したことはすごく大きかったですね。

「こころ」を描く

これまで子ども達は、(小学校受験のために「受験絵画」をさせていたこともあって)お絵描きはやらされているという感じがありました。でも今回のEGAKUでは純粋に描くことを楽しんでいたように思いました。受験のため絵のお教室で「こころ」を描くなんてないですから、全然違いますよね。
私個人としても「こころ」を描くことに抵抗はなかったですし、逆に自分の思っている事を出すのはよいのではないかと思いました。

自分との対話のプロセスで気づいたこと

そうしたなかで、このEGAKUは自分のなかでの美意識や価値観や大切にしているものについて考え、内なる感覚を呼び戻すきっかけになったと思いました。あの限られた時間とあの紙の大きさで描くことは実はとてもハードで、創作する中でとても集中をしていました。

私はヨガをやっているので瞑想の訓練をしているのですが、まさにEGAKUは瞑想だと思いました。瞑想の目的は内観(自分の内部)をみつめて神と宇宙との合一、自分が大きな存在の中のひとつであることを見いだすことなんですが、最近一般的にも瞑想の大切さが唄われて、色々な種類の瞑想が紹介されてはいますが、やはり瞑想することは難しいと思われているんです。でもこうして何かにすごく集中することや、そのなかで自分と向き合っているということこそがまさに瞑想なんですよね。

今回のテーマである「自分のこころ〜大切にしているもの〜」を意識したときに、まずは大きなハートを描きました。それは私の中で「愛情」と「偏見がなくオープンにしていたい」ということを大切にしたいという想いがあったからなんです。そして自然が好きなので「自然との調和」を意識した緑をまわりに描き、ハートはあたたかいオレンジ色にしました。するとハートの中に蝶を描きたくなってきたので、好きな色である紫を使って蝶を描きました。すると今度はその蝶がメヴィウスの輪みたいになってきました。でも蝶を描きたいと自分は思っていたので描きつづけていたら、だんだんそれが今度は宇宙人の眼のように見えてきて、それが私を見つめているような気がしてなんだか怖くなってきたんです。怖いから蝶に戻そうと、蝶の羽の部分に白をのせたりしていました。すると今度はその白が卵にみえてきたんです。
その時、蝶は「変容=メタモルフォーゼ」の象徴であることに気付いたんです。蝶って、卵から青虫になって蝶になるという変容の象徴のようなものですよね。この気付きに救われました。私は、自然のようにとどまらずに色々変化したり成長していく存在を大きなハートで包んでいこう、と。

これはすごいプロセスでした。自分との対話を絵を通してやっていたという感じでした。描いてみないと自分にそんな恐れがあるなんて気付かなかったでしょうね。

お互いの鑑賞を通して気付くこと

お互いの作品を鑑賞するというのもすごく良かったです。人の絵を鑑賞するのも自分の絵を鑑賞してもらうのも。
個を尊重する場でありながらも、みんな同じプロセスを経て共有しているものがあるから孤独ではなくつながっているという安心感がありますよね。そして全体として一体感があるといってもそれぞれは個性的で個々の自尊心も尊重されている、そういう場でしたよね。

自分の作品に対しては、「ドキドキする感じ」「宇宙人みたい」「とにかく進む」そういったコメントをもらったんです。どれも全部自分が描きながら進んでいったプロセスを感じられるコメントだったのでとても面白いと思いました。例えば「とにかく進む」というコメントについて、変化していくとか成長していくとか、私が絵にこめた気持ちを、コメントを書いた人は感じてくれたんだなあと思いました。

また、他の人の作品を鑑賞している時に、自分はわりと良いところをみようとする傾向があるなということに気付きました。自分の中で良い人になろうとする傾向があるというか。そこで、できるだけ正直で誠実であろうという意識をその時改めて持ったことをよく覚えています。
とはいえ、そもそも絵やテーマも抽象的なのでほめようがない。そこも面白いところでした。

あと、他の参加者の作品を鑑賞していて、すごく気にいった絵があったんです。ほしいって思うような。絶対これはアーティストが描いた作品だと思ったら作者はサラリーマンだった。鑑賞ワークの場では、自分の感じた事や作者の想いを交換しながらも、その場では作者のバックグラウンドなどは関係なくやりとりが行われる。だからそうした意外性があることも面白かったですね。EGAKUはすべてのプロセスにおいて洗練されていて無駄がなくてあたたかいというか。本当に良かったです。

親子で参加する意義

小学校受験の時に子どもは「お教室」に行っていたんです。そこには自然体験やエクスカージョン(遠足)、お絵描きなどたくさんのカリキュラムがあるので、親はそこに子どもを送り込んでそれぞれのエキスパートにお任せしている感じだったんです。その場で子どもはたくさんの経験をして、「楽しかった」と言ってはくれるのですが、どう楽しかったのか、何をしたのかは親が聞き出さないと出てこない。そしてたくさんの体験をしたとしても子どもってすぐに忘れてしまうんですよね。多分どこかに蓄積していたりはするんでしょうけど。しかも、親は子どもと同じ経験をしていないから、想いを共有できなかったりわかってあげられない。どういうところでどのように感じてどう表現したかとか、どんなところでどのようにつまずくかっていうのをわかってあげられないところがあるんです。

小学校に入ると、親子でというより子どもだけで参加する活動が増えてきて、子どもだけの世界になってくるので、意識的に親子で関わりながら同じ経験を共有したい、そんな想いがありました。やっぱり子どもって覚えているんですよね、家族と一緒にやったことって。そんな矢先にEGAKUに出会ったんです。

実際にEGAKUに参加してみて、子どもはとても楽しかったと言っていました。なにより子どもたちは自分の作品をとても誇らしげにしているんです。下の子は自分の夏休みの自由研究は既に完成していたのですが、それをやめて今回のEGAKUの作品を自由研究として学校に提出したんです。その時、自分の作品に対して他の人がコメントを書いたポストイットも含めて提出しようとしていました。結局コメントはとって提出しましたが、コメントも含めて自分の作品なんでしょうね。学校から作品が戻ってきたらまたコメントを貼って家族の他の作品とあわせて飾ります。

EGAKUに参加して家族の絆が深まったような気がします。本当にいい経験をさせてもらいました。親として自分が真剣に向きあった姿、真剣に取り組んだものを子どもたちに見せるよいチャンスだったとも感じています。やはり親子で参加することはとても意味があると思いました。

EGAKUのススメ

やはり先にもいいましたが、子どもが幼稚園児や小学生でいわゆる「お受験」をしているママには特によいと思いました。とはいえ、どんな人にもどんな状況の人にもおすすめしたいですね。恐れがある人や傷ついている人にも。
パステルって暗い世界になったとしても修復していけるところがいいと思いました。光でキレイな世界だけがいいわけではないということが表現できたり、描き方や表現に自由さがあったりするのもとてもよいと思いまいした。

本当にこのプログラムは頭がよくてハートがある人が考えたという感じですね。EGAKUは、子どもたちのリクエストもあるし、是非それぞれの学校でもやってほしいと思います。